ホンダはいかに「dream」を売るか、或いは「the power of dream」はF1を制するか

F1通信:ホンダF1「アースカー」:The Power of Dreams? by Pitpass

この文章はなかなか読みでがありました、面白かったです。
佐藤琢磨がインサイトに乗ってたって言うのは知らなかった。



ホンダF1「アースカー」:The Power of Dreams? by Pitpass
パワー・オブ・ドリーム?

2005年ダブリンのクローク・パークでのU2の大規模なコンサート中、いつも謙虚な引っ込み思案のボノは歌うのをやめ、バンドの音を止めた。聴衆は静かになった。アイルランド最大の競技場が静寂に包まれる中、ボノはゆっくりリズミカルに手を叩き始めた。

「僕がこうやって手を叩くたびにアフリカの子供がひとり死んでいく」と彼は意味ありげに言った。

最初の反応は水を打ったような静けさだった。そして数秒後、その静寂は誰かの叫び声によって破られた。

「それならその忌々しい手を叩くのをやめればいいじゃないか!」

この話は愉快だし、もしかすると作り話かもしれないが、金持ちの有名人が地球を救うためにみんなに行動を変える必要があることを説く場合につきものの問題をよく表している。その素晴らしい業績を上げているボノでさえ批判されることがある。それは、2005/6ヴァーティゴ・ツアーで2億ドル以上を稼ぐ一方で、アイルランドの税金を逃れるために自社をオフショアに移したり、アフリカを救う必要性を一般人に説いたりしたためである。また帽子を忘れたのでプライベート・ジェットで取りに行かせたとも言われている。

同じことが、ホンダと、地球の画像で飾られたRA107で象徴される問題の環境イニシアチブにも当てはまる。環境問題をプロモーションするF1チーム。これは環境保護を考慮していると世間に思わせるための見せかけであるとされており、このイニシアチブの批判者は大いに楽しんでいる。ホンダが環境保全という大義を擁護するのは、ハンニバル・レクターに健康的な食事の宣伝を頼むようなものだ。友人のひとりなどは、ファクトリーに堆肥の山をつくるために、記者会見でマスコミにでたらめを伝えたのだろうかと言っていた。

自動車会社が世界的環境論争において優位な立場をとろうとすると、世界中の環境保護論者が大活躍して反撃したのは意外ではない。F1マシンの利用に対する反発は言うまでもない。グリーンピースとフレンズ・オブ・ジ・アースが、チームは世界中を飛び回って膨大な量のCO2を排出し、F1マシンは平均的な乗用車に比べ何百倍も空気を汚し、大慌てで量産されている排出削減の規制に全く適合していないのでホンダは悪者だという当然かつ真摯な指摘をした。

ホンダには問題があったと噂されている。ラッキーストライクに代わるスポンサーが見つからなかったので、真っ黒あるいは空白のマシンで走るという恥辱に直面し、友人である19エンターテインメントのサイモン・フラーに相談した。その結果、この才気縦横な仲介人は、ホンダの環境に対する配慮をプロモーションすると同時に、ウィリアムズが昨年最悪のシーズンを過ごしたという生々しい記憶にもかかわらずRBSに加えてAT&Tとレノボを獲得したのに、ジェンソンがハンガリーで優勝したホンダF1にはパートナーがいないという事実から注意を逸らすために、驚くべきPRの離れ業を思いついたのだった。

さて、これをどう考えるか? これは重要なことだろうか?

わたしはこう考える。ホンダは自分のF1チームを手に入れた。あなたが家を手に入れたら、あなたは自分の好きな色で家を塗ることができる。同じことがホンダにも言える。あなたが家を柔らかなオフホワイトに塗って庭に花を植えれば、誰もが「素敵ですね、あなたは素晴らしい隣人です」と言うだろう。しかしあなたが家のドアを紫に塗って「死」という文字を描き、窓を板でふさぎ、火山灰のなかに小石を埋め込み、庭にヘルスエンジェルスの地元支所本部であるという看板を掲げれば、近所の人は狼狽するだろう。警察を呼ぶかもしれない。あるいはインターホンを鳴らして逃げるかもしれない。

ホンダに対する反応はこれと同じである。確かにホンダはINGやボーダフォンのような巨大スポンサーを見つけられなかった。しかし、ホンダのような自動車メーカーであればこれは問題ではないし、率直に言っていずれにしろ請求書は支払われるだろう。ホンダは非常に小規模な自動車メーカーでスポンサーを必要としているからこそ、このような環境キャペーンに熱心なのだろうと思う人がいるかもしれない。

さて、この小規模というのは相対的なものである。2005年、ホンダは売上高から見ると世界第7位の自動車メーカーである。トップ2社はGMとトヨタである。トヨタはF1に参戦しているので、トヨタとホンダを比較してみよう。2007年3月までの1年間、トヨタの世界的販売台数は847万台、総収入は23兆2,000億円、純利益は1兆5,500億円と予想されている。同時期のホンダは、365万5,000台の自動車を販売したと見られている。かなり少ない数字のように見えるが、これに1,046万台のバイクと、612万台のエンジン製品を加算しなければならない。これはみんなが使っている芝刈り機、船外機付きボート、発電機などである。つまりホンダは11兆1,000億円を売上げ、5,600億円の純利益を得ている。

これを考慮すると、タバコに染まったイメージから脱却し、ホンダの環境保全の取組みを宣伝する新しいカラーリングを決めたことで、ホンダCEOの福井さんが悩むことはなかったと思う。

ホンダの新しい戦略は、マスコミからの試練を受け、最も強力な企業でさえ膝を屈するような環境保護圧力団体に支配されるイメージ重視の世界において、非常に勇敢でリスクを伴うものである。BPを見ればよい。テキサス石油精製所での大爆発とアラスカのパイプラインでの小規模な原油漏れのおかげで、BPの新しい緑と黄色の花のロゴはひどくしおれてしまった。

自動車メーカーとして、あるいはエンジンや陸海空で利用される製品を開発する事業者として、ホンダは化石燃料を燃やさなくてはならない製品を使用するために、厄介な問題に対処する必要がある。少なくともたいていの場合、これはホンダだけの責任ではない。内燃機関は100年以上利用されており、これなくしては現在の我々はない。そう、家に戻ることもできないだろう。

本田博俊が1998〜2000年、ジョーダンに競争力のある無限-ホンダエンジンを供給していた頃、わたしにこんな話をしてくれた。彼の両親、つまり本田宗一郎と妻のさちが東京の交通渋滞で身動きできなくなったときのことである。

宗一郎はイライラしながら「この交通量は何だ」と言った。

さちは「あらあら、文句を言ってはいけませんよ。あなたがその一因なんですから」と答えた。

ホンダの製品は確かに渋滞と汚染の原因となっているが、ライバルらに比べて特にひどいわけではない。そしておそらく一部のライバルらよりも素早くこの問題に対処している。わたしは自動車産業の擁護者ではないし、ホンダのスポークスマンでもないので、自分の見たことだけをお伝えしよう。

佐藤琢磨が2002年ジョーダンに在籍していた頃、オフィスで会うことになったのだが、私は彼がホンダ・アコード・タイプRで派手に登場するものと思っていた。しかし彼は最も経済的なホンダ・インサイトに乗って静かにやってきた。その車は気泡シートの一片に似ていなくもなかったが、誰かがハイブリッドカーに乗っているのを見たのはこれが初めてだった。どんなレースにも勝てそうにもなかったし、ボンネットを上げていじくり回せば感電しそうだったが、ちゃんと役目を果たしていた。

数年後、わたしはジェンソン・バトンとともに栃木の本田技研を訪れた。2004年12月のことで、我々はF1部門をガイドつきで見学した。F1部門は、かつてジョーダンのゲイリー・アンダーソンが、あまりに広いので地球の湾曲を見ることができると表現したビルの中にあった。我々は、エンジン動力計セルや動的テスト装置など、あらゆる驚異を目にした。詳しく言うことはできないが、感銘を受けたというだけで十分だろう。

このツアーが終わると、我々は小型車の試乗に招待された。これは燃料電池自動車のプロトタイプであることが判明したが、ジェンソンがスイッチを入れると、プレイステーションのゲームのようにダッシュボードの出力が上がった。我々はファクトリーの周りを静かに環境に配慮しつつ走った。とても感動した。これが未来だと思った。

"myearthdream.com" のウェブサイトはホンダが立ち上げたもので、ホンダの企業サイトとリンクされており、"environmentology"「環境学」について読むことができる。これはトム・クルーズが率いる新しい狂信的教団ではなく、技術を利用して環境問題に対処する方法を説明するものである。この名称は気に入らないが、やろうとしていることは気にいっている。F1においてさえ、現在のエンジンメーカーはリッターあたり約320bhpを生み出しており、大きく進歩した空力と組み合わせれば、10年前に比べ1周あたりの燃料消費は約40%削減されている。前進しているのだ。

そうは言っても、"myearthdream.com" のイニシアチブは必ずしも筋が通っているとは言えない。もしわたしがホンダなら、多額のF1参戦コストを軽減してくれる大きなスポンサーが1〜2社いた方がよいし、強力なスポンサーの生み出す追加的なマーケティング力を取り込みたい。環境保護プログラムに参加するために企業がライセンス料を支払うというアイデアは素晴らしい。これはおそらく成功するだろうが、その成功の範囲は最終的に市場が決めることになるだろう。

マーケティングと社会的責任(企業の愚かな善行を指す用語)を組み合わせた予算を使って、これに加わる企業も何社かはあるだろう。そしてファンも参加するに違いない。しかしどのレベルで収益が横ばい状態になり、このプロジェクトが厳しい商業的観点から判断されるようになるのかはわからない。

また、ホンダのスポークスパーソンたちが、彼らに向けられた最も難しい質問に完全に答えたとは思えなかった。ジェンソンは、同僚の自転車出勤について語ったが、あまり説得力がなかった。ブラックレーが近いうちに北京のようになるとは思えない。おそらく誰かが本田宗一郎の本から影響を受けて、丘の上り下りが楽になるように自転車にモーターを取り付けることだろう...

従来のスポンサーシップが機能しなくなる、あるいはこれまでのようにスポンサーシップでは稼げないという意見には賛成しない。いずれの場合もちゃんと機能するだろう。ただし、それはホンダが「ドリーム」を正しく売る場合に限られる。そしてそのための最良の方法は、フェラーリ、マクラーレン、ルノーと常に真っ向対決して勝つことである。

企業がホンダの "myearthdream.com" のイニシアチブの整然とした列に加わり、チーム、親会社、サイモン・フラーのスタッフが伝説的なマーケティングの画期的な神様となるかどうかは時間と商業市場が決める。あるいは、しばらくすると、家の外壁の色を変えたくなる持ち主のように、ホンダは新しいカラーリングを求め、サムスン、モトローラ、ノキアなどのロゴを将来のマシンに掲載するかもしれない。

いずれにしろ、ホンダの行動はすでに広く報道され、大きな議論を引き起こしている。2週間もすれば、メルボルンで2007年F1ワールドチャンピオンシップにおいてホンダにとって本当に重要なことが何かを見ることになり、新しいカラーリングはさほど重要でなくなるだろう。「パワー・オブ・ドリーム」に優勝できる力があるのだろうか?

by マーク・ギャラガー
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  by mtack | 2007-03-09 04:36 | tagebuch

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